カバ🦛のAI・金融研究ブログ

AI は地政学リスクを測れる?日本のニュースと株価で検証

1. どんな論文?

地政学リスクを測る指標を、従来のキーワード検索から大規模言語モデル(LLM)による意味理解へと置き換えた研究です。AI が記事の文脈やリスクの深刻度を読み解くことで、単純な単語カウントで混入していたノイズを減らし、地政学的緊張が株価に与える影響をより精密に捉えられることを示唆しています。

2. ニュースの見出しと市場の波乱

中東やウクライナの緊迫した見出しを見て株価の下降を予想したものの、翌週には何事もなかったかのように株価が戻っていた。そんな経験はないでしょうか。

「市場が価格に織り込むのは、突発的なニュースの見出しそのものより、緊張が見通しに定着していく過程だ」――これは、今回紹介する論文が米国のデータから導き出した一つの結論です。では、果たして日本の市場でも同じ傾向は見られるのでしょうか。

本記事では、AI-GPR 指数という新しい物差しを提案した論文を読み解きつつ、日本のニュースと株価データを用いてその主張がどこまで再現できるのかを検証します。

3. 論文の解説

この論文は Federal Reserve Board of Governors and CEPR に所属する Matteo Iacoviello らによる研究です。本研究は、Federal Reserve Board of Governors working paper に掲載されています。

どんなことをしようとしたか

地政学リスク(戦争・テロ・国家間の緊張といった、国際関係の悪化がもたらす不確実性)が高まると株が下がることは投資家の常識であり、それを数値で測る道具もすでに存在します。Caldara and Iacoviello (2022) の GPR 指数(新聞記事のうち地政学リスクを論じているものの割合を数値化した指標)は、新聞記事に戦争や危機のキーワードが共起する頻度を数えるという単純明快な方法で、学術と実務の標準になりました。

しかし、単語を数えるだけではノイズの影響が大きいという欠点もあります。例えば「war」という単語を数える場合、ウクライナ戦争のコストを論じる記事と、「インフレとの戦い(war on inflation)」と書いた記事を区別できません。除外語(その語が含まれていたら記事全体を分類対象から外すためのキーワード)で戦争映画を弾こうとしても不完全であり、結果として指数には地政学と無関係なノイズが多く混入していました。

どんなモデルを提案したか

著者らは、指標の定義を一切変えず、判定の仕組みだけを大規模言語モデルによる意味理解(単語の出現ではなく、文章が何を言っているかを踏まえて判断すること)に差し替えることを提案しています。GPT-4o mini に対して記事の文脈を読ませ、それが現在進行形の深刻な脅威なのか、過去の回顧なのかを判断させ、0.0 から 1.0 までの連続スコアを出力させました。

指数の構成式の詳細

論文では、ある日の AI-GPR 指数を次のように計算しています。

まず、その日の記事ごとに付与されたリスクスコアを合計します。次に、新聞の発行量の時系列変動を吸収するため、その日に発行された全記事数(the, be, to, of, and, at, in の7語すべてを含む記事の総数)で割ります。

最後に、1985〜2019年の平均が100になるよう正規化定数を掛けます。これにより、この指数は「新聞報道のうち地政学リスクに割かれた強度加重シェア」を表すことになります。なお、後述の日本データを用いた本検証では、この英語7語の条件は適用せず「収集した市場ニュース件数」を分母としています。

実験方法

1960年から2025年までの米国の主要3紙を対象に、AIを用いた採点を行いました。LLMが採点した記事は約460万本、正規化の分母となる総発行記事数は約850万本に及びます。そして、構築された AI-GPR 指数と、米国の超過リターン(株式のリターンから短期国債の利回りを引いたもの)との関係を回帰分析で調べています。比較対象のベースラインとして、従来のキーワード照合による指数を用意しました。

結果

AI が文脈を理解することでノイズが減り、地政学リスクが株価を下落させる効果が、キーワード版と比べて約 3 倍の強さで明確に推定されました。さらに、記事を「これから起きるかもしれない脅威(threats)」と「すでに起きた行為(acts)」に分けた結果、市場に持続的な下押し圧力をかけるのは「脅威」の方であり、「行為」は予期せぬサプライズの分だけが価格に影響することが示唆されました。

4. 思ったこと

  • 測定精度を高めたことで見える傾向がある 測定のノイズを減らすだけで、今まで「有意でない」と見えていた市場の反応がくっきりと浮かび上がった点が非常に面白いです。AI が物差しとしての精度を上げることで、過去の実証結果をひっくり返せる可能性を示しています。
  • 「脅威」と「行為」の非対称性は万国共通か? 論文では、市場を下押しするのは持続的な「脅威」であると結論づけていますが、後述する日本データでの検証では、必ずしもこの通りにはなりませんでした。米国市場での結果が日本市場やその他の市場にも当てはまるかは、さらなる議論の余地がありそうです。
  • LLM の広すぎる解釈への懸念 AI は関税紛争や国内の暴動まで「地政学リスク」として拾ってしまう癖があるようです。 LLM の思考をより厳密に制御し、識別の妥当性を高める必要があると感じました。

5. 検証してみました

論文の主張である「AI によるニュースの採点能力」と「株価との関係」について、日本のニュースデータで試してみました。

結果、AI がキーワード検索より精緻にニュースを拾い上げる能力は確認できましたが、株価の動き(とくに脅威と行為の非対称性)に関しては、日本データでは論文が報告した関係を確認できませんでした。

それぞれの手法の概要は以下の通りです。

  • キーワード検索: 従来の GPR 指数を模して、指定されたキーワードが近接して現れるかを機械的に判定する手法です。
  • AI 判定: 論文の手法に沿って LLM に文脈を読ませ、地政学リスクの定義と5段階の目安に基づいて 0.0 から 1.0 のスコアを付与させる手法です。論文と同じく費用を抑えるため、地政学に関わりそうな語を 1 つでも含む記事だけを LLM に読ませ(1,362 件中 315 件)、残りは 0 点として扱う 2 段構えにしています。指示文の目安では 0.0〜0.2 が「地政学リスクへの言及なし」の帯なので、0.2 以上が付いたものを「地政学リスクあり」と数えています。

なお、LLM に渡しているのは新聞記事の全文ではありません。各ニュースについて「見出し+収集時に作られた 1〜3 文の要約+出典 URL」の形式のテキストを使っています。そのため、以下で確かめられるのは「要約テキストからの判別能力」までで、論文が扱った記事本文そのものでの文脈判定が再現できたわけではありません。

記事の採点と手法の比較

まず、キーワード検索と AI 判定とで、地政学リスクとして拾う記事にどれほどの差が出るかを確認しました。なお、比較の基準にした参照分類は、ニュース収集時に別の手順で自動付与されたカテゴリ(地政学・金融政策など)であり、人手で確定した正解ではありません。以下の数字は「どちらが正しいか」ではなく「2 つの自動分類がどれだけ食い違うか」を表すものとして読んでください。

拾い方 地政学リスクありと判定した件数 収集時の分類では地政学でなかった割合 収集時に地政学とされた 181 件のうち拾えなかった割合
収集時に付いた分類 (参照) 181 件
AI 判定 270 件 42.2% (114/270) 13.8% (25/181)
キーワード検索 215 件 46.0% (99/215) 35.9% (65/181)

AI に読ませることで、参照分類が地政学としたものを拾えない割合は 35.9% から 13.8% へと大きく減りました。残った 25 件の内訳は「絞り込みで落として LLM に読ませなかった」が 15 件、「読ませたが 0.2 未満だった」が 10 件です。

一方、AI が拾った 270 件のうち 114 件は、収集時の分類では地政学ではありませんでした。ただしこれは AI が地政学リスクを新たに「発見した」という意味ではありません。人手の正解ラベルを作っていないため、この 114 件は自動分類同士が食い違ったという事実にすぎず、 AI が「正しい判定をした」ことを確認できていません。論文の誤検出率 13.3% に対してこの値が高いのも、参照分類の粗さ(制裁や貿易摩擦のニュースが「経済指標」に分類されている例があります)を相当含むためと考えられます。

なお、絞り込みで LLM に読ませなかった 1,047 件から 150 件を抜き出して採点したところ、4.7% が地政学リスクに関する内容を含むと判定されました。同じ割合が全体にあてはまるなら、絞り込みの段階で約 49 件を取りこぼしている計算になります(この推計は上の表には含めていません)。

採点の成功例

ここでは、AI がどのように文脈を読んでスコアを付けたかの代表例を紹介します。

ケース LLM が読み取った内容 予測スコア 収集時の分類
2021年8月15日 タリバンによるアフガニスタン首都カブール掌握、ガニ政権崩壊 国家権力の崩壊と政権奪取 0.90 地政学
2022年2月24日 ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始、日経平均株価が昨年来安値を… 新たな大規模な戦争の開始 1.00 地政学
2022年2月24日 ロシアがウクライナへ軍事侵攻を開始、日経平均は2万6,000円を割… 既存の緊張関係が実際の戦争へ 1.00 地政学
2025年10月3日 植田日銀総裁が大阪で講演、最近の金融経済情勢と政策運営を説明 地政学リスクに該当しない 0.00 金融政策
2025年10月8日 9月FOMC議事要旨を公表、利下げ幅を巡る当局内の意見対立が鮮明に 地政学リスクに該当しない 0.00 金融政策

採点結果の安定性

AI が「結果を知っているから(後知恵)」高いスコアをつけているのではないか、といった懸念もあります。論文にならい、記事の発表日を「今日」と伝えてそれ以降の出来事を知らせない指示でも採点し直しました。あわせて、モデルを差し替えた場合と、まったく同じ条件でもう一度採点した場合も比べています(いずれも同じ 40 件)。

元の採点から変えたこと 何を確かめたいか 比べた件数 元の採点との相関 平均のずれ まったく同じ点だった割合
記事の発表日を「今日」と伝え、それ以降の出来事は知らせない (モデルは同じ) 日付を明示しても点が動かないか 40 件 0.976 0.043 52.5%
採点モデルだけを上位モデルに差し替える (指示文は同じ) 使うモデルで点が変わらないか 40 件 0.942 0.109 25.0%
指示文もモデルも変えず、もう一度採点する 実行するたびに点がぶれないか 40 件 0.993 0.019 67.5%

どの場合でも相関は 0.94〜0.99 と非常に高く、点数の水準が大きくブレることはありませんでした。論文が指摘するように、AI は指示や設定が変わっても安定した物差しとして機能しているようです。

ただし、1 行目の 0.976 を「後知恵バイアスは無い」の証拠として読むことはできません。採点しているのは、どのイベントよりも後に学習を終えた同じモデルです。「その後は知らない」と指示したところで、事前学習に入った将来の展開まで消せるわけではありません。後知恵を本当に切り離すには、各イベント以前で学習を止めたモデルで採点し直す必要があります。ここで確かめられたのは、あくまで指示文やモデルを変えても点数が動かないという頑健性までです。

脅威と行為で市場の反応は違うか

論文の中心的な主張である「これから起きるかもしれない話(脅威)」と「すでに起きた話(行為)」で市場の反応が異なるかを、日本の TOPIX データで確かめました。

区分 件数 (日数) 起点から 5 営業日の TOPIX 平均 平均の 5〜95% の範囲 上がった割合 基準との差 (5〜95% の範囲)
これから起きるかもしれない話 (脅威) 194 件 (170 日) +0.74% +0.35% 〜 +1.07% 62% +0.43 ポイント (-0.00 〜 +0.84)
すでに起きた話 (行為) 130 件 (106 日) +0.19% -0.35% 〜 +0.70% 53% -0.12 ポイント (-0.66 〜 +0.44)
基準(期間中の任意の日付) 1573 件 (1573 日) +0.31% +0.10% 〜 +0.51% 57%

「件数」の横に「日数」を併記しているのは、同じ日に出たニュースは 5 営業日後までのリターンがまったく同じ値になるためです。194 件は 170 日分に相当し、しかも隣り合う日どうしのリターンも大きく重なります。上の範囲は、同じ日を 1 つにまとめたうえで日付の連続ブロック単位で引き直して求めたものです(記事 1 本ずつを別々に数えると、範囲が実際より狭く出てしまいます)。

この期間の TOPIX は全体として上昇基調にあったため、平均がプラスであること自体はニュースの効果を意味しません。読むべきは基準との差です。「脅威」のあとは基準を +0.43 ポイント上回りましたが、その範囲は -0.00 〜 +0.84 とゼロをまたいでいます。「行為」も -0.12 ポイント(-0.66 〜 +0.44)で同様です。つまり論文が報告した「脅威こそが株価を押し下げる」という非対称性は、この標本では再現もできなければ、否定もできませんでした。少なくとも、押し下げる方向の動きは見当たらなかった、というところまでが言えることです。

指数の構成と株価への影響

最後に、採点したスコアから地政学リスク指数を作り、TOPIX のリターンとの関係を調べました。指数は「直近 7 日のニュースの点数合計 ÷ 件数」を毎日計算し、期間全体の平均が 100 になるよう正規化して算出しています。論文は 30 日の移動平均を使っていますが、今回の検証ではより実践的に 1 週間のニュースを集計しました。

表の 「平均の差」は、指数が 1 週間でひときわ大きく(標準偏差以上)上振れした週に、TOPIX の週次リターンが平均で何パーセントポイント変化したか を表します。そして 「判定」は統計検定(t 検定)の結果 です。「本当は関係がないのに、たまたまこれだけの差が出てしまう確率」を p 値 として計算し、それが 5% 以上なら偶然の範囲内とみなして「傾向なし」。5% を下回った場合だけ、係数がプラスなら「上昇傾向」、マイナスなら「下落傾向」と判定しています。

回帰の設定

指数は週内平均の前週差を取り、その標準偏差で割って標準化しています。そのため係数は「指数の週次変化が 1 標準偏差ぶん大きい週に、TOPIX の週次リターン(週内の日次対数リターン合計、%)が平均どれだけ違うか」を意味します。標準偏差の実額は指数ごとに異なり、AI 判定 152 ポイント / キーワード検索 150 ポイント / 脅威 183 ポイント / 行為 227 ポイントです(いずれも期間平均を 100 にそろえた後の値)。指数そのものの水準も中央値 59・上位 5% が 394 とばらつきが大きく、週次の変化がこれだけ動くのは 7 日窓で 1 週あたりのニュースが数件しかないためです。

指数を週にまとめるとき、どの日の値もその日を含む週ではなくその日より後で最初の取引日の週に寄せています。週次リターンは月曜〜金曜の合計なので、金曜の引け後に出たニュースをそのまま同じ週に入れると、市場が動き終わった後の情報でその週のリターンを説明することになってしまうためです。土日や休場日だけでなく取引日そのものも 1 日ずらすのは、同じ日に寄せると引け後のニュースがその日の引けを説明できてしまうからで、5 営業日リターンを翌営業日から数えるのと同じ基準です。

「予想できた分」と「不意打ちの分」は、指数の週次変化を AR(4)(直前 4 週の動きから予測する回帰)にかけ、予測できた部分と、そこから外れた残差に分けたものです。分解すると先頭 4 週が落ちるため、対象週数が 331 週から 327 週に減ります。

窓を 7 日に縮めた代償として、1 つの窓に入るニュースは平均 4.4 件(最小 1 件)まで減り、2,360 日のうち 212 日はニュースが 1 件も無いため指数が定義できず抜け落ちます。日によっては指数がほぼ 1 本の記事の点数で決まるので、30 日窓のときより指数はざらついています。

検定は Newey-West(HAC)標準誤差による t 検定です。週次リターンは分散不均一で、指数の窓や AR 分解の残差には系列相関が残るため、通常の OLS 標準誤差では小さく出すぎます。ラグ長は Newey & West (1994) の自動選択(今回は 5 週)、有意水準は論文と同じ 5%、95% 信頼区間も同じ HAC 標準誤差から算出しているので、区間がゼロをまたぐことと p ≧ 0.05 は同値です。論文も標準誤差ベースの t 検定で有意性を判断しています。

いずれも同じ週どうしを突き合わせた関係であり、指数から翌週のリターンを予測できるかを見た検証ではありません。

指数をそのまま使ったとき(331 週)

指数の作り方 測った成分 平均の差 (%ポイント) 95% 信頼区間 p 値 判定
AI 判定 指数全体 +0.050 -0.232 〜 +0.332 0.726 傾向なし
キーワード検索 指数全体 +0.078 -0.198 〜 +0.354 0.579 傾向なし
脅威・行為 脅威 (これから起きるかもしれない話) +0.084 -0.171 〜 +0.339 0.518 傾向なし
脅威・行為 行為 (すでに起きた話) -0.022 -0.340 〜 +0.297 0.893 傾向なし

予想できた分と不意打ちの分に分けたとき(327 週)

指数の作り方 測った成分 平均の差 (%ポイント) 95% 信頼区間 p 値 判定
AI 判定 予想できた分 +0.204 -0.360 〜 +0.768 0.477 傾向なし
AI 判定 不意打ちの分 -0.022 -0.401 〜 +0.356 0.908 傾向なし
キーワード検索 予想できた分 -0.218 -0.625 〜 +0.190 0.295 傾向なし
キーワード検索 不意打ちの分 +0.196 -0.147 〜 +0.539 0.261 傾向なし
脅威・行為 脅威・予想できた分 -0.150 -0.742 〜 +0.441 0.618 傾向なし
脅威・行為 脅威・不意打ちの分 +0.159 -0.213 〜 +0.531 0.401 傾向なし
脅威・行為 行為・予想できた分 +0.453 -0.163 〜 +1.069 0.149 傾向なし
脅威・行為 行為・不意打ちの分 -0.195 -0.572 〜 +0.183 0.312 傾向なし

指数と株価の関係: 12 項すべてが傾向なし 12 項それぞれの推定値(点)と 95% 信頼区間(横線)。t 検定で有意になった項は 1 つも無く、すべて「傾向なし」を表す灰色です。

図にすると一目瞭然で、12 本の横線がすべてゼロの縦線をまたいでいます。平均リターンと p 値を見ると、論文と同条件の AI 判定では +0.050(p = 0.726)、キーワード検索でも +0.078(p = 0.579) と、どちらも論文が報告した下押し(-0.136)とは符号が逆で、しかも偶然の範囲を出ていません。いちばん傾向が大きく出たのは「行為のうち事前に予想できた分」の +0.453(p = 0.149) ですが、これも信頼区間がゼロをまたいでいます。

論文が 460 万本の記事と 3,452 週で効果を検出したのに対し、本検証は 315 件の採点と 331 週。論文が報告した -0.136 という大きさの効果は、そもそもこの標本量では見分けられません。「日本では関係が無かった」ではなく「この規模では判定できなかった」と読むのが正確なところでしょう。

6. まとめ

  • やったこと: AI-GPR 指数の論文に基づき、日本の市場ニュースに対して LLM を用いた地政学リスクの採点と、脅威/行為の分解、そして TOPIX リターンへの影響を検証しました。
  • 分かったこと: AI は文脈を読み取ることでキーワード検索の取りこぼしを激減させ(35.9% → 13.8%)、指示やモデルを変えても安定した採点ができます。ただし読ませたのは記事本文ではなく見出しと要約なので、確かめられたのは要約テキストからの判別能力までです。一方、論文の主要な主張である「持続的な脅威が株価を押し下げる」という非対称性は、日本データでは確認できませんでした。イベント単位で見ると脅威と基準の差はゼロをまたぎ、指数の回帰でも 12 項すべてが「傾向なし」でした。
  • これから気になること: AI が関税政策や国内の混乱なども広く「地政学リスク」として拾う傾向をどうプロンプトで制御するか、また、標本を増やしたときに米国と同じ非対称性が姿を現すのかを確かめることが、今後の楽しみなテーマです。

7. 注意・免責事項